【裁判例から】東京地裁 平成17年(行ウ)第639号 障害基礎年金不支給取消等請求事件
H16年4月、傷病名「両変形性股関節症」で、障害基礎年金事後重症請求を行う。
程度不該当のため不支給となる。審査請求、再審査請求を経て訴訟提起。
【提出した診断書の内容】
(関節可動域及び筋力)
股関節は、左右ともに人工関節を装着している。
股関節の関節可動域・・・左右ともに屈曲70゜、伸展10゜、内転0゜、外転25゜
股関節筋力・・・左右ともに半減
膝関節及び足関節は、左右ともに異常なし。
(日常生活活動動作の障害の程度)
・一人でうまくできる場合「○」・一人でできてもやや不自由な場合「○△」・一人でできるが非常に不自由な場合「△×」・一人で全くできない場合「×」
- k ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい)両手・・・△×
- l 靴下をはく(どのような姿勢でもよい)両手・・・×
- m 片足で立つ・・・△×(右)、△×(左)
- n 座る(星座、横座り、あぐら、脚投げ出しなどの姿勢を持続する)・・・×
- q 歩く(屋外)・・・△×
- o 深くおじぎ(最敬礼)をする・・・○△
- p 歩く(屋内)・・・△×
- r 立ち上がる…×
- s 階段を上る…×
- t 階段を下りる…×
(補助具の使用)杖を常時使用
(日常生活活動能力及び労働能力)事務作業はできる
【社会保険審査官が行った実地調査の結果】
- k ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい)両手・・・△×
- l 靴下をはく(どのような姿勢でもよい)両手・・・×
- m 片足で立つ・・・×(右)、×(左)
- n 座る(星座、横座り、あぐら、脚投げ出しなどの姿勢を持続する)・・・×
- q 歩く(屋外)・・・△×
- o 深くおじぎ(最敬礼)をする・・・△×
- p 歩く(屋内)・・・△×
- r 立ち上がる…×
- s 階段を上る…×
- t 階段を下りる…×
【争点】
2級15号「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が認められる状態にあって、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」に達しているか。
【被告国側の主張】
一下肢で認定すると人工関節そう入置換していることから3級7号の8と認められ、もう一方の一下肢についても同等の程度であることからやはり3級7号の8と認定され、併合しても3級になる。
【判決】
障害基礎年金を支給しない旨の処分を取り消す。
【社労士簡野のコメント】
当事件は、課長通知「両下肢の 3大関節のうち 1関節にそれぞれ人工骨頭又は 人工関節のそう入置換手術を行った場合の障害認定について(年管管発 0426第 1号)」の基になった事件の一つです。
原則的に、人工骨頭又は 人工関節は3級認定ですが、手術を行ってもなお、立ち上がる、歩く、片足で、立つ、階段を上がる、階段を下るなどの日常 生活動作が、実用性に乏しいほど制限されている場合は2級以上に認定されます。