〈判例〉両感音性難聴


聴覚障害者障害基礎年金不支給裁定取消請求事件(神戸地裁平成23年1月12日判決) 

当事件は、「必ず聴力の測定結果が記載された医師の診断書記載によらなければならないということではなく、他に障害の程度を判断するための合理的資料が得られる場合には、それによって障害の程度を認定することもできるというべきである。」と判示され、障害認定日の診断書が無くとも、遡って認定されました。
原告訴訟代理人弁護士が寄稿された「賃金と社会保障1540」で、判決文では読み取れない部分(背景等)を確認しました.。
1.認定基準が緩和されたときの取扱いについて
原告Aさんが20歳に達した昭和42年当時は、現在より認定基準が厳しく、当時の認定基準には該当しないが、裁判所の求釈明に対して、被告国は「後日、基準の緩和などで給付要件を満たすことになった場合は、裁定請求を却下せず、当該要件を満たすことになった日以降の年金を給付する取扱いををしている。」と回答した。(賃金と社会保障1540引用)
当該回答により、認定基準が緩和された昭和48年改正法施行日(昭和48年3月1日)をもって、受給権を取得したことを前提とする裁定処分がされるべきであった。
2.裁判により受給できた金額は?
裁定請求の日から遡って5年分の障害基礎年金について支給され、それ以前の分については、時効消滅により受け取ることができない。(賃金と社会保障1540引用)
ということは、2級(約年80万円×5年)=400万円。
3.結び
尋問と口頭弁論の際、パソコン筆記が使用され、診断書が無くとも遡って認定された画期的な裁判でした。
ただし、一般的に400万円は高額ですが、訴額としては高額といえず、弁護士費用を考えると…および、支分権の消滅時効の起算点について、検討する余地はなかったのかと考るところです。