〈判例〉うつ病


【裁判例から】東京地裁 平成26年(行ウ)第66号 訴えの追加的併合申立事件(障害基礎年金不支給取消等請求事件)

(概要)

H5年1月、頭痛、不眠、吐き気などの症状からA病院を受診し、H17年6月まで通院してうつ病に関する精神療法及び薬物療法の治療を受けた。

H16年12月、精神障害者福祉手帳3級の交付。

H17年7月、Bクリニックに転院する。

H23年1月、主位的に障害認定日(H6年7月18日)による障害基礎年金、予備的に事後重症請求(H23年1月31日)による基礎厚生年金の裁定請求を行う。

H23年2月、裁定請求日(H23年1月31日)は支給決定を、障害認定日(H6年7月18日)は等級不該当を理由により不支給決定を受ける。

H23年5月、認定日不支給決定の審査請求を行う。

H23年8月、審査請求棄却。

H23年10月、再審査請求を行う。当時の主治医であるE医師作成の診断書を追加提出する。

H24年4月、再審査請求棄却。

H24年10月、訴訟提起。

 

(提出した診断書の内容)H6年7月20日現症・・・障害認定日(A病院C医師作成)

傷病名「うつ状態」

ウ2 日常生活能力の判定

(1)適切な食事・・・自発的にできるが援助が必要

(2)身辺の清潔保持・・・自発的にはできないが援助があればできる

(3)金銭管理と買い物・・・おおむねできるが援助が必要

(4)通院と服薬・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(5)他人との意思伝達及び対人関係・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(6)身辺の安全保持及び危機対応・・・自発的にはできないが援助があればできる

(7)社会性・・・不明

ウ3 日常生活能力の程度…(3)

(病歴状況申立書)

通勤・・・バス+自転車で20分

就労状況・・・パートで週4日、5時間/日(スーパー)+週3日、2時間/日(清掃)

 

(提出した診断書の内容)H22年5月27日現症・・・裁定請求日

傷病名「うつ病」

ウ2 日常生活能力の判定

(1)適切な食事・・・自発的にできるが援助が必要

(2)身辺の清潔保持・・・自発的にできるが援助が必要

(3)金銭管理と買い物・・・おおむねできるが援助が必要

(4)通院と服薬・・・できる

(5)他人との意思伝達及び対人関係・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(6)身辺の安全保持及び危機対応・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(7)社会性・・・不明

ウ3 日常生活能力の程度…(3)

 

(病歴状況申立書)

週1日ヘルパーの利用。

パートの仕事を行うことにも支障が生じるようになる。

 

【原告の主張】

A病院C医師作成のH6年7月20日現症の診断書は信用性を欠く。C医師はH6年7月20日時点の主治医ではなく、診断の基礎となる資料が乏しい状況で記載されたものであり、客観的信用性が担保されていない。

再審査請求の際に追加提出した当時の主治医であるE医師作成の診断書は、具体的な状況を踏まえたものになっており、原告の日常生活の実態に迫った内容である。E医師作成の診断書が本件処分後に作成された点に着目して、診断書の信頼性を排除すべきではない。

無理をしてパートタイムの労働をして生活をしていたので「社会的な適応性が認められ、労働に対する制限も少ない」と評価することはできない。

【被告国の主張】

不支給処分に不満を持った原告が障害等級2級以上に該当する内容の診断書を作成するようにE医師に要請し、E医師においては、要請に抗し難かったなどの事情がうかがわれる。

障害認定日頃、スーパーでのパートを週4日、5時間/日程度行い、他のパートも掛け持ちで行っていた。

【争点】

国民年金法施行令別表に定める障害等級2級16号に該当する程度の障害の程度であったか否か。

【判決】

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

 

社労士簡野のコメント】

行政手続き(審査請求、再審査請求)において、相当の理由がない限り、提出済みの診断書の修正・訂正や追加に診断書を提出しても採用されません。司法においても同様の判断のようです。

当事件の場合、認定日当時の就労状況が影響しているのではないかと考えます。