〈判例〉うつ病


【裁判例から】東京地裁 平成24年(行ウ)第679号 障害年金不支給取消等請求事件

(概要)

業務内容変更等に伴い、精神に変調を来すようになり

H17年9月、勤務先社内診療所を受診。A医師担当の下、2週間に1回程度の頻度で継続的に受診する。

H20年11月~A医師が院長を務めるBクリニックへ転院する。精神障害者福祉手帳3級の交付。

H21年9月、精神障害者福祉手帳3級の更新。

H22年5月末~6月頃?(日付詳細不明)、主位的に障害認定日による障害厚生年金、予備的に事後重症請求による障害厚生年金の裁定請求を行う。

H22年12月、定年退職したが、H23年1月~嘱託社員として再雇用され、以後、数3日勤務の短日雇用を続けている。

H22年12月、障害認定日および裁定請求日いずれにおいても程度不該当により不支給決定を受ける。

H23年2月、審査請求を行う。

H23年7月、審査請求棄却。

H23年9月、再審査請求を行う。

H24年3月、再審査請求棄却。

H24年5月、Cクリニックに転院する。

H24年9月、訴訟提起。

 

(提出した診断書の内容)H19年3月5日現症・・・障害認定日

傷病名「反復性うつ病障害」

ウ2 日常生活能力の判定

(1)適切な食事・・・できる

(2)身辺の清潔保持・・・できる

(3)金銭管理と買い物・・・できる

(4)通院と服薬・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(5)他人との意思伝達及び対人関係・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(6)身辺の安全保持及び危機対応・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(7)社会性・・・不明

ウ3 日常生活能力の程度…(2)

 

(提出した診断書の内容)H22年5月27日現症・・・裁定請求日

傷病名「双極性気分障害」

ウ2 日常生活能力の判定

(1)適切な食事・・・できる

(2)身辺の清潔保持・・・できる

(3)金銭管理と買い物・・・できる

(4)通院と服薬・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(5)他人との意思伝達及び対人関係・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(6)身辺の安全保持及び危機対応・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(7)社会性・・・不明

ウ3 日常生活能力の程度…(2)

 

【原告の主張】

A医師作成のH19年3月5日現症およびH22年5月27日現症の診断書は実態の症状と乖離しており、信用性がない。現在受診しているCクリニックD医師作成によるH24年9月18日付および10月2日付け(現症日不明)の診断書が日常生活状況に合致し、信用性が高い。

障害年金裁定における障害の程度の司法判断は、必ず直接に請求者の治療診断を行った医師ないし医療機関が作成した診断書又は診察診療が行われた当時に医師ないし医療機関が作成した診療録等の記載によらなければならないということはなく、他に障害の程度を判断するための合理的資料が得られる場合には、それによって認定することができるというべきである。

(CクリニックD医師作成のH24年9月18日付および10月2日付け(現症日不明)診断書)

傷病名「うつ病」

ウ2 日常生活能力の判定

(1)適切な食事・・・自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

(2)身辺の清潔保持・・・自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

(3)金銭管理と買い物・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(4)通院と服薬・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

(5)他人との意思伝達及び対人関係・・・助言や指導があればできる

(6)身辺の安全保持及び危機対応・・・助言や指導があればできる

(7)社会性・・・おおむねできるが時に助言や指導が必要

ウ3 日常生活能力の程度…不明

 

【被告国の主張】

A医師の判定に何ら不合理な点はみられず、十分に信用できる。

労働が制限を受けるかどうかは、請求者が現に従事している仕事を基準とするのではなく、一般的な労働が可能かどうかにより判断すべきであって、現に従事している者の就労状況等は、あくまでも日常生活活動等の状態を判定する際の一考慮要素であり、現に従事している仕事が制限されるかが直接の判断基準となるものではない。

【争点】

国民年金法施行令別表に定める障害等級2級16号又は厚生年金保険法施行令別表1に定める

障害等級3級13号及び14号に該当する程度の障害の程度であったか否か。

【判決】

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

 

社労士簡野のコメント】

裁判手法と推察しますが、「裁定請求時提出した診断書は実態の症状と乖離しており、信用性がない。今回提出した診断書で認定すべき。」との原告の主張は強引な印象を受けます。

診断書と実態の症状が乖離していたならば、裁定請求前に加筆等をA医師に依頼すべきであったのではないかと考えます。

裁定請求から判決まで4年以上の月日はあまりに長いため、裁定請求の重要性の認識が必要です。