〈判例〉知的障害


【裁判例から】大津地裁 平成18年(行ウ)第8、第18号 障害年金不支給取消等請求事件

「○○通勤寮」という比較的軽度の 知的障害者が日常生活のトレーニングを受けながら、職場へ通勤する施設があります。ある程度慣れたら、卒寮して地域で生活をします。1986年から2001年までの間、50名超の知的障害者全員が2級の障害基礎年金を受給してきましたが、2003年以降、不支給決定が相次ぎ、8割が不支給の事態となりました。これまで○○寮では、例外なく全員認められてきたのにです。審査請求、再審査請求を経て、裁判所へ訴訟提起にすすみました。

【争点】

入寮者は一般企業で就労して手取り9万円程度の給料がありますが、2級16号「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」に達していると認められるか。

【判決】

障害基礎年金を支給しない旨のいずれの処分も取り消す。

社労士簡野のコメント】

原告側は、訴訟中に再度事後重症請求を提出し、提出した全員が支給決定されました。知的障害の程度は、一般的に重くなったり軽くなったり変化しないと言われていますが、このことについて被告国は、「1回目の請求時点より、2回目の方が障害の程度が重くなったから。」と弁明しています。訴訟中に退職した人がいたからでしょうか。

現行の認定基準にも「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活が向上したものと捉えず、・・・ ・・・仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分に確認したうえで日常生活能力を判断すること。」と明記されていますが、就労しているため不支給決定を出していると思われる事案は数々ありますし、公開審理(再審査請求)を傍聴しても、そのようなやり取りが見受けられます。

精神の診断書を使用する場合、就労状況が深く関係します。